抄録

マリゼブ®錠は,オマリグリプチンを有効成分とする週1回経口投与が可能な新規ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬である.オマリグリプチンは,シタグリプチンとDPP-4との結合様式を基に理論的に分子設計を行い,DPP-4に対して強力で選択的な阻害活性を示し,ヒトでの長い半減期が期待できる良好な薬物動態プロファイルを有するよう,最適化の過程を経て創成された.In vitroでヒトDPP-4に対するIC50値は1.6 nMであり,シタグリプチン(18 nM)の約10倍であった.マウスの経口ブドウ糖負荷試験でオマリグリプチンの血糖降下作用及びDPP-4阻害作用が示された.健康被験者においてオマリグリプチンは経口投与後速やかに吸収され,長い終末相消失半減期(>100時間)が確認された.オマリグリプチンが全身循環血中に長く滞留するメカニズムには,①見かけの分布容積が大きく組織中に幅広く分布する,②ほとんど代謝を受けず,未変化体として主に腎臓から排泄され,③受動的透過により腎で再吸収されるためクリアランスが低いという特徴的な薬物動態プロファイルが寄与すると考えられる.オマリグリプチンは週1回投与の最終投与から7日後のトラフ時でも80%以上のDPP-4阻害率を示し,効果が1週間持続することが示唆された.2型糖尿病患者を対象とした国内第Ⅲ相単剤投与試験では,オマリグリプチンの24週間投与は優れたHbA1c低下効果を示し,本邦で広く使用されている連日投与のシタグリプチンに対して非劣性を示した.また,空腹時血糖及び食後2時間血糖も低下させた.国内第Ⅲ相併用投与試験では,他の経口血糖降下薬と併用時でも優れた有効性が確認された.連日投与のDPP-4阻害薬と同様,オマリグリプチンは概して忍容であり,症候性低血糖の発現は低く,長期投与時の安全性も特筆する問題は認められなかった.患者を中心とした医療が重要とされる中,簡便な週1回投与が可能なオマリグリプチンは2型糖尿病患者を支える新たな治療選択肢として期待される.

引用文献 (37)